「水分補給は、認知症予防において非常に重要である。」

老年科専門医であり、名古屋学芸大学大学院栄養科学研究科の下方浩史教授は、力強くこう語ります。40年以上にわたり老年病（高血圧症、糖尿病、動脈硬化など）の研究に情熱を注いできた下方教授が、長年の研究から導き出した意外な結論とは？それは、私たちが日常的に口にする「水分」に関することでした。

なぜ水分が認知症予防に重要なのか？

脳の約80%は水分で構成されており、神経細胞間の情報伝達や老廃物の排出など、脳の正常な機能を維持するために水分は欠かせません。しかし、高齢になると、喉の渇きを感じにくくなり、自発的な水分補給が不足しがちです。また、腎機能の低下などにより、体内の水分バランスが崩れやすくなります。

下方教授の研究では、慢性的な脱水状態が脳の萎縮を促進し、認知機能の低下を招く可能性が示唆されています。特に、軽度認知障害（MCI）の患者さんにおいては、水分不足が症状を悪化させるリスクが高いと考えられています。

下方浩史教授が推奨する「飲むべき水分」

では、具体的にどのような水分をどれくらい摂取すれば良いのでしょうか？下方教授は、以下の点を重視しています。

• 水：最も基本的で、吸収も早いのでおすすめです。
• 麦茶：カフェインを含まず、ミネラルも豊富です。
• 経口補水液：脱水状態の改善に効果的ですが、糖分が多いので、飲み過ぎには注意が必要です。
• ハーブティー：リラックス効果があり、水分補給にもなります。ただし、カフェインを含むものもあるので、注意が必要です。

下方教授は、1日に1.5～2リットルの水分をこまめに摂取することを推奨しています。ただし、腎機能が低下している場合は、医師に相談の上、適切な水分量を決めるようにしましょう。

日常生活で実践できる水分補給の工夫

毎日必ずしも目標量を達成できるとは限りません。下方教授は、日常生活で無理なく水分補給を習慣化するための工夫を提案しています。

• 水筒を持ち歩く：常に水分を身近に置いておくことで、飲む機会が増えます。
• 水分補給のタイミングを決める：起床時、食事中、入浴後など、毎日同じ時間に飲むように心がけましょう。
• 水分補給をリマインダーにする：スマートフォンなどのアプリを活用して、水分補給の時間を通知するように設定しましょう。
• 水分補給をゲーム感覚で楽しむ：水分摂取量を記録したり、家族や友人と競争したりすることで、モチベーションを維持しましょう。

まとめ

認知症予防には、食生活の改善や運動習慣の確立など、様々な要素が重要ですが、その中でも水分補給は、誰でも簡単に取り組める基本的な対策です。下方浩史教授の40年の研究が示すように、適切な水分補給は、脳の健康を維持し、認知機能の低下を防ぐために不可欠です。今日から、意識的に水分補給を心がけ、健やかな毎日を送りましょう。