被爆者健康手帳を拒否した父の決断:差別からの抵抗と「二世」の苦悩

「差別されるから」という父の言葉。
国が認定する被爆者を示す被爆者健康手帳。しかし、その手帳を持つことが、かえって差別を生むという現実がありました。この記事では、被爆者健康手帳を拒んだ父の決断、そして「二世」と呼ばれる被爆者の子孫たちが抱える苦悩に迫ります。
厚生労働省のデータによると、2024年度末時点の全国被爆者数は9万9130人(兵庫県2080人)。被爆者健康手帳の交付以来、初めて10万人を割り、減少の一途をたどっています。しかし、何らかの理由で手帳を持たない、持てない被爆者も存在し、その数は正確には把握されていません。
被爆者健康手帳とは?
被爆者健康手帳は、原爆や水爆の爆発による被爆が確認された方を対象に交付される手帳です。被爆の実態を証明し、健康診断や医療費助成などの対象となる重要な証明書です。しかし、その一方で、手帳を持つことが、就職や結婚、近所づきあいなど、日常生活において差別につながるケースも少なくありませんでした。
父が手帳を拒んだ理由
私の父は、被爆者健康手帳の交付を受けませんでした。「差別されるからだ」と一言。幼い頃から、父は手帳を持つことへの強い抵抗感を抱いていたようです。学校でいじめられたり、大人から冷たい視線を向けられたり…。手帳を持つことは、社会から浮き出ることを意味し、差別を強めるだけだと父は考えたのです。
「二世」の苦しみ
被爆者の子孫である「二世」は、健康上の問題だけでなく、精神的な苦しみも抱えています。親が被爆者であるという事実は、社会的な偏見や差別につながる可能性があり、常に警戒心を抱かざるを得ません。また、親の体験談を聞くことで、戦争の悲惨さや被爆の苦しみを間近に感じ、心の傷を負うことも少なくありません。
被爆者の減少と未来への課題
被爆者数は年々減少していますが、被爆による健康への影響は、世代を超えて受け継がれています。「二世」「三世」と呼ばれる被爆者の子孫たちが、健康診断を受けたり、医療費助成を受けたりするための制度は、今後も維持・充実していく必要があります。また、被爆の歴史を語り継ぎ、核兵器のない世界を目指すための教育も重要です。
被爆者健康手帳を拒んだ父の決断は、差別への抵抗であり、未来へのメッセージでもあります。私たちは、父の思いを胸に、差別をなくし、すべての人々が安心して暮らせる社会を築いていく必要があります。